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2008/10/08

ベランダに残る想い

家族が揃ったので父&母と久しぶりに寿司を食べに。
その帰り、ふいに父が寄りたい場所があると言い出した。
そこは先日まで父が講師を勤めていた、父の師匠のバレエ教室。
近年、その方が亡くなり、奥様も亡くなり、後を継ぐ人も無くそのバレエ教室は長い歴史に幕を下ろした。
父もそれ以降は毎週通っていたその建物には行ってなかったので、その寿司屋から近い事もありどうなってるか見たくなったというわけだ。
人けの無いその家の玄関に大きく”売却物件”と看板が出ていた。
しばらくそれを見つめて父は、

「寂しいもんだな」

とポツリと呟いた。
そりゃ寂しいよね、何十年も通った自分のバレエの原点の場所が無くなるっていうのは。
そういや昔、この近くに部屋を借りてたって話を聞いてたのを何故かこのタイミングで思い出した。僕が母のお腹の中にいる時に住んでいて、生後8ヶ月までいた場所だ。

「行ってみようよ」

と切り出した。
歩いていける距離のハズなのに、あまりに景色が変わったので父も母も分からずグルグルと車で回ってしまう。
段々頭の中の景色と地形が一致してきたのだろう、母が「こっちじゃない?」父が「そうだ、こっちだ」と言い出した。
住んでいた頃は小さな川が目の前に流れていたそうだ。今では川は埋め立てられ緑道になってるハズとのコト。
一階が大家サンの家で、当時でもすでにボロいアパートだったらしい。

そりゃ建物も変わってるだろうし、目印になるものもないはず・・・と思ったその時、目の前に当時のままのアパートが現れた。

父がまだ28歳の時にすでに古かったというコトは、築60年くらい経ってるってコト・・・?
しかも人が住んでる気配があるのだ。現役なのだ。
鳥肌が立った。
目の前の緑道に周り上を見上げる。
6畳の和室に1.5畳の台所。それだけの部屋。
洗濯機は共同で、階段の下で洗濯してた。

「でもベランダが広かったから洗濯物が干しやすかったし、日当りも良かったのよ」

僕は見た事がある。

そのベランダに立ち、僕の生まれる5日前にお腹の大きい母は手に紙を持ってにこやかにカメラに向かってる写真を。その手には、
”亮太 6月25日”
と書いてある。
当時25歳の母は強く美しかった。
今、そのベランダが目の前にある。人の気配はない。
ふいの再会。なんだか予想もしてないそのままの再会に涙がポロポロ出てくる。
師匠の教室の近くに住居を移し、バレエで身を立てると誓った若い父。
臨月を迎え、母になる準備を着々としてた若い母。
なんだかその思いがまだそのベランダに残ってて、僕に
”大きくなったなぁー、がんばってるかー!”
って話しかけてる気がしてならなかった。


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コメント

ご無沙汰です!

なんだかすごーくすごーく伝わりますね。
なくなってから気づくもの
そこにあるから気づくもの
生きてるんだな、ってふと思う瞬間ですね。。。

投稿: ちゃっきぃ | 2008/10/10 23:29

そのまま現役!
兄さんの産まれた場所。
突然、いや、予定調和でふってきた記憶。意味ある奇跡の対面。
待ってたんだね。
なにも云わず、ただただ変わらずずーっと。


ご両親の感慨もさぞ深かったでしょうね。。

投稿: m | 2008/10/10 23:40

わたしにもあります、そういう場所。。
亮太さんの想いになんだかすごく、共感しちゃいました。
毎度のことですがうまく言えそうにもないのでこれだけ書いて去ります笑
ではまた(*^_^*)

投稿: こっぺぱん | 2008/10/10 23:46

幸せな、素敵な時間でしたね♪
あたしまで涙が出てきちゃいました(;_;)

家族に逢いたくなりました(´∀`)

投稿: さくら | 2008/10/10 23:50

はじめまして…
先月 舞台で太頼さんと踊らせて頂いた者です。
舞台前には 何度もスタジオに伺わせて頂き お父様とお母様にも大変お世話になりました。
今回の舞台では 太頼さんのお人柄に助けられ 本当に感謝でいっぱいなのですが…
亮太さんのブログを拝見し ご家族皆さんのお人柄の素晴らしさに 益々感動して…私も涙が出てしまいました。
本当に素敵なご家族ですね!!

これからも ブログ拝見させて頂きたいと思っています。

投稿: yurisa | 2008/10/10 23:56

変わりゆくもの、そしていつまでもそこにいてくれるもの。

色々ありますね。私の中にもあります。

そして、さすが亮太さんのパパさんママさんも素敵な方ですね☆

投稿: らう | 2008/10/10 23:59

両親、亮太さんの原点の場所。そこに行くことによって曲づくりにいいことがあるとおもいますよ。

投稿: ゆりこ | 2008/10/11 00:56

素敵な日ですね^^
自分の育った町並みはどんどん変わっていくけれど、そこに残された思い出は色あせることなく、ずっとあるものですね。

投稿: おか | 2008/10/11 07:18

亮太さんのご家族、すごくステキですね。そして、ステキな時間を過ごされたんですね。
私の生まれ育った大好きな町は今、どうなってるんだろう?
行きたくなってきました☆

投稿: こっしー | 2008/10/11 23:16

あらまぁ 素敵なご家庭の様子が文面~ひしひしと伝わって来ましたよ。家族って暖かいですよね?原点に戻るんです。だって、故郷ですもんね。今頭の中で(お母さん なあに?お母さんって良い匂いお料理している匂いでしょ? 卵焼き~の匂いでしょう♪)が流れてます。私事ですが昨日甥っ子が遊びに来てね、(高1)ハヤッ!今の子はこういう制服の着方をするのねぇ(笑)なんて言ったらおばはんおばはんって言うんですよ…まっ 確かに伯母だからね(笑) 亮太君の様に此の日を懐かしく思う時が訪れるんでしょう~ね。近頃少しおセンチなわたくしです。グリーンバード活躍してますね素敵な一日を以上、ビッキー☆でした。

投稿: ビッキー☆ | 2008/10/12 15:13

家族ってなんだろう…
母になるって、どんな覚悟や想いがあるんだろう…
考えさせられると同時に、不安が押し寄せてきました。
どんな未来が待っているのでしょうか?
昨日のヒミツも、今日の涙も、笑って話せる日が来ますように。
そのとき、隣にあの笑顔があったらいいな。

投稿: ばにこ | 2008/10/19 17:53

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