先日、久しぶりに両親とランチするべく実家に行った。
足元に後日出す予定の粗大ごみが置いてあって。
「あれ・・・?」と思ってよく見ると、父が使っていたSONYのオープンリールのデッキだった。
小さな時に、父がこれを使ってバレエのレッスンや発表会の音作りをしていたのを昨日の事の様に思い出す。
オープンリールなので、テープを切ったり貼ったりして曲順や構成を編集して一本の曲にするのである。
そして、テープスピードを変更出来るので、レッスン時に曲のテンポを変えたりしても使っていた。
今では音の編集は太頼がPCを使って行うし、レッスンはCDJである。
「捨てるの?」と聞くと「もう一台性能のいい方をとってあるから、こっちは捨てようかと思ってる」と父。
「これ、もらっていい?」
「いいけど使えるかわかんねーぞ」
「ちょっと試しに電源入れてみようよ」
急遽ランチの前にゴソゴソと準備を始める二人を母が何事かと見てる。
電源を入れて、父がバレエの曲が入ったオープンリールを持ってきて慣れた手つきでセットしていく。
スイッチを入れると、オーケストラが温かなテープの音で流れてくる。
「使えるじゃん!」
「使えるなぁ!でもこれ何に使うんだ?」
最近の音楽製作はほとんどがデジタルでのレコーディングである。
音はもちろんいいのだけれど、その音に温かみや手触りを加える為にテープの音を再現するソフトまであるくらいだ。
一手間加える人は、デジタルで録った音を一回テープに流しこみ、それをまたデジタルに取り込んだりする。
最近自分でもデモを作ったり、インストゥルメンタルの曲を打ち込みで作ってミックスする時に、そういったやり方に興味を持っていた。
まぁスタジオで使われてる業務用のオープンリールなんてデカイわ高いわメンテナンスが必要だわで現実的ではない。
かといってカセットテープで代用するのも味気ないなぁと思っていて、以前から父が使っていたオープンリールはどうしてるんだろか?と思っていた。
それがこんな形で再会するなんて、しかも捨てられそうな直前に!!
オープンリールのニーズもどんどん減っていて、以前父が新しいテープを買いに行くと生産終了となっていて、探しに探して秋葉原で放送局が払い下げた空きテープを大量に買ってきていたのを思い出した。
消え行くテクノロジー、されど必要とされてる音がここにあった。
それが父から子へという形で受け継がれる。
「まだバレエスタジオを始めたばかりの頃は、これを車に積んでレッスンに向かってたもんだ。」
「私も良く使ったわ」
「ふーん」
若かりし頃の父と母の想いとストーリーも一緒にこのデッキに込められている。
これから僕が創る音が、このデッキを通すことでどんな温かみを帯びて耳に響いてくるのか。
本当に本当に楽しみだ。